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2025年5月7日
企業・経営 / プレスリリース
(写真左)神戸製鋼所 末永 和之・(写真右)パナソニック コネクト 大塚 隆史
株式会社神戸製鋼所(本社:兵庫県神戸市中央区、代表取締役社長:勝川 四志彦/以下、神戸製鋼所)とパナソニック コネクト株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役 執行役員 プレジデント・CEO:樋口 泰行/以下、パナソニック コネクト)は、自動車・二輪業種における溶接品質安定化、電着塗装性向上を実現するアーク溶接新工法・新溶接材料の販売及び開発協力に関する協業に合意しました。
近年、地球環境の保全の観点から、世界各国で自動車の排ガス規制の強化が進んでいます。自動車メーカーは燃費の向上やCO2排出削減を実現する方法を様々な角度から検討を続けており、その主要な解決策として車体の軽量化に取り組んでいます。鉄鋼メーカー各社はこの要請に応える形で高張力鋼板や亜鉛めっき鋼板を開発し、自動車メーカーもこれらの新しい鋼鈑の採用を拡大しています。ところが、高張力鋼板では強度が高い代わりにプレス加工性が難しくなるため、加工精度の問題から板組みのバラツキ(板隙や狙い位置)が大きくなり溶接工程での品質確保が課題となっています。また、2010年代から塗装を必要とする足回り部品などにおいて溶接後のビード表面に残存する溶接スラグによる腐食問題がクローズアップされ、溶接スラグ対策の必要性も高まっています。
今回の協業では、両社が共同でこれらの問題を解決する新工法・新溶接材料の普及を目指します。新工法では、幅広いビード形状や溶込み形状の適正化によりロバスト性(※1)等の溶接性能と高速溶接等の両立を図っています。パナソニック コネクトは、神戸製鋼所の新工法AXELARCプロセスをベースに、自社の新ロボットコントローラーTAWERSへ適用し、保有する薄板溶接に関するノウハウを元にチューニングを施した新型ロボットコントローラーG4のオプションソフト「AXEL-AWP4」を開発、販売を開始します。また、神戸製鋼所はこの新工法に最適な新しい溶接ワイヤ「AXELARC™ AX-1AS」、「AXELARC™ AX-1A」の販売を開始します。
さらにこの新工法・新溶接材料の優位性を両社が協力してお客様に訴求していくことで、お客様へよりスピーディーに正しく新工法と新溶接ワイヤのメリットをお伝えし、お客様の新工法の活用をサポートしていきます。
※1 ロバスト性とはギャップや狙い位置ズレなど製造上のバラツキに対して溶接品質を安定的に確保する能力
KOBELCOグループは今中期経営計画(2024~2026年度)において「稼ぐ力の強化と成長追求」および「CNへの挑戦」を最重要課題に掲げ、これらを実現するための変革「KOBELCO-X(※2)」を推進しています。今回ご紹介した技術・取組みは、以下のAXの一例と考えています。
当社グループでは、高度化する溶接の自動化ニーズに応えるべく、ロボットシステム、電源・装置、溶接材料、プロセス技術の総合力を活かした技術開発に加え、新たな提案も継続し、これからも『世界で最も信頼される溶接ソリューション企業』としてお客様の溶接に関わる課題解決とモノづくりの進化に挑戦していきます。
※2 関連資料:KOBELCOグループが取り組む「変革」(https://www.kobelco.co.jp/ir/pdf/20240520_1_02.pdf#page=15)
パナソニック コネクト株式会社は2022年4月1日、パナソニックグループの事業会社制への移行に伴い発足した、B2Bソリューションの中核を担う事業会社です。グローバルで約29,400名の従業員を擁し、売上高は1兆2,028億円(2023年度)を計上しています。「現場から 社会を動かし 未来へつなぐ」をパーパス(企業としての存在意義)として掲げ、製造業100年の知見とソフトウェアを組み合わせたソリューションや高度に差別化されたハードウェアの提供を通じて、サプライチェーン、公共サービス、生活インフラ、エンターテインメント分野のお客様をつなぎ、「現場」をイノベートすることに取り組んでいます。また、人と自然が共存できる豊かな社会・地球の「サステナビリティ」と、一人ひとりが生きがいを感じ、安心安全で幸せに暮らすことができる「ウェルビーイング」の実現を目指しています。
また、「人権の尊重」と「企業価値の向上」を目的に、DEI(Diversity, Equity & Inclusion)推進を経営戦略の柱のひとつに位置づけ、多様な価値観を持つ一人ひとりがイキイキと力を発揮できる柔軟性の高い企業文化の改革に取り組んでいます。
▼パナソニック コネクト株式会社 ウェブサイト
https://connect.panasonic.com/jp-ja/
▼パナソニック コネクト Newsroom
https://connect.panasonic.com/jp-ja/newsroom
▼パナソニック コネクト DEI(Diversity, Equity & Inclusion)
https://connect.panasonic.com/jp-ja/about/sustainability/dei
神戸製鋼所は2024年11月よりAXELARC™プロセス搭載溶接ロボットシステムと専用溶接ワイヤを建設機械などの中厚板の溶接用途向けに販売開始しております。この度の協業により、パナソニック コネクトが自動車・二輪業種のお客様に提案する新商品に同プロセスを採用いただきます。
この新溶接プロセスは、新たに開発した専用溶接ワイヤ「AXELARC™ AX-1AS」、「AXELARC™ AX-1A」、との組み合わせにより、溶接速度アップ等による高能率、溶接スラグ低減による電着塗装性や亜鉛めっき鋼板における耐気孔性の向上、極低スパッタの実現等により、更なる生産性向上、溶接品質向上に貢献することができます。
従来の正逆ワイヤ送給制御溶接施工ではコンタクトチップへの負担が大きく、長時間連続溶接性の確保に課題がありましたが、新たに開発した「AXELARC™ AX-1AS」、「AXELARC™ AX-1A」は、ワイヤ表面に特殊な処理を施し、新溶接プロセスの特殊電流波形と組み合せることによって、長時間連続溶接性を飛躍的に向上させることに成功しました。また、新溶接プロセスを用いての高速溶接でも良好なビード外観が得られるようにワイヤ成分も最適化しており、長時間連続溶接性、溶接作業性、高溶着性、継手機械的性質(表1)が優れるソリッドワイヤです。
(表1)全溶着金属の機械的性質一例(シールドガス:100%CO2)
ワイヤ正逆送給による溶滴移行形態の違い
新工法「AXEL-AWP4」溶接は、新ワイヤ送給制御を採用しています。
従来ワイヤ送給制御である正逆送給を周期的に繰り返すAWP4溶接は、アーク期間中に溶融させたワイヤ先端を母材に短絡(接触)させ、短絡期間中にワイヤを逆送させます。言い換えると、正逆送給により溶滴を短絡移行させる短絡移行溶接法です。
この従来ワイヤ送給制御に対し、新ワイヤ送給制御である「AXEL-AWP4」溶接は、短絡移行の送給制御ではなく、正逆送給により溶滴を慣性により振り落とすドロップ移行溶接法をベースに、足回り部品に適した溶滴移行であるディップ移行溶接法(※3)を採用しています。
この新ワイヤ送給制御により、アーク反力より溶滴を離脱させることができなかった炭酸ガスアーク溶接においても、規則的な溶滴の離脱を実現するパルスアーク溶接が可能となりました。低電流域から高電流域までの全電流域で低スパッタの炭酸ガスパルスアーク溶接を実現します。
※3 ディップ移行溶接法とは、パナソニック保有技術である足回り部品に特化したパルスマグ溶接法「Dip-Pulse」の溶滴移行方式です。溶融池に溶滴をソフトに接触(短絡)させて溶滴を供給していくディップ移行によるパルス溶接法です。
「AXEL-AWP4」搭載溶接ロボットシステムの構成
「AXEL-AWP4」搭載溶接ロボットシステムは、「AXEL-AWP4」溶接を実装したWG4コントローラーから構成された溶接ロボットシステムActiveTAWERS4および協業先である神戸製鋼所が新たに開発した「AXELARC™ AX-1AS」/「AXELARC™ AX-1A」ワイヤの組み合わせにより構成されます。世界初(2025年4月25日パナソニック コネクト調べ)の新ワイヤ送給制御の採用により、低電流域から高電流域まで低スパッタは勿論のこと、炭酸ガスアーク溶接における幅広いビード形状や溶込み形状の適正化、かつ高速溶接、スラグ付着のない滑らかなビード外観等の高品質な溶接を実現し、更なる生産性向上、溶接品質向上に貢献することができます。
「AXEL-AWP4」溶接のビード外観および溶込み形状
従来の短絡移行溶接であるAWP溶接に比べ、ディップ移行溶接法である「AXEL-AWP4」溶接は、適正なアーク長を確保しつつ、アークの広がりも得られるため、滑らかな幅広いビード形状を実現します。また、炭酸ガスアーク溶接特有のなべ底の溶込み形状を担保しつつ、適正な溶込み深さも確保します。ギャップや狙い位置ズレといったロバスト性に効果を発揮できます。
炭酸ガスアーク溶接の特長であるアーク集中性が高く、溶融池(溶融金属)の粘性が低い特長を活用することで、亜鉛蒸気の排出が容易となり、ビード内部に残存するブローホールやビード表面のピットといった気孔抑制に効果があります。
溶接後および電着塗装後のビード外観
ワイヤ組成を適正化し、スラグ生成状態を調整した「AXELARC™ AX-1AS」ワイヤにより、炭酸ガスアーク溶接においても塗装剥がれの主要因であるシリコン系スラグがビード表面に付着することなく、溶接できます。よって、電着塗装性を向上でき、また経年変化による塗装剥がれも抑制できます。
以上のように、ディップパルス溶接である「AXEL-AWP4」溶接は、3つの特長を持ち合わせていることから、高張力鋼板や亜鉛めっき鋼板が使用され、かつ塗装を必要とする比較的板厚のある自動車部品である足回り部品をメインターゲットに、自動車業界および二輪業界に新たな価値を提供していきます。
なお、現在ご使用いただいているTAWERS「WG4コントローラー」につきましても、ユニット追加およびソフトウェアの更新いただくことで、「AXEL-AWP4」としてご使用いただけます。
記事の内容は発表時のものです。
商品の販売終了や、組織の変更などにより、最新の情報と異なる場合がありますので、ご了承ください。